第2回 GTE、だいたい何か起きる
2026年10月15日 11:13

GTEサマースクールは2026年夏で10年目となります。よく色々な人に「どの年のサマースクールが印象的ですか」と聞かれます。私は即座に「全ての年!」と答えてしまいます。
サマースクールは、毎年同じようにプログラムを設計しているはずなのに、最終日は最高にして、でも毎年違うフィナーレを迎えます。ある程度こうなるだろう、と想定しながら最終日に向かってスタッフ一同準備をしていますが、だいたいその想定通りにはなりません。必ずと言って想定外、いや想定の斜め上をいきます。
思い起こすと、2018年は、開催直前まで台風が来ていました。2020年から2023年はコロナ禍。2024年はゲリラ豪雨で停電する時間がありました。2025年は地震があり、津波警報が半日続きました。そして2026年は、初日から体調を崩した生徒が深夜に救急車で運ばれることに。幸い翌日には復活して、本人は何事もなかったかのようにプログラムに戻ってきました。その他にも、主要スタッフが体調が崩れて突然声が出なくなったり、生徒がスーツケースを電車の中に忘れてきたり....キリがないくらい、だいたい何か起こっています。
こうして並べてみると、よく毎年やっているな、と主催する自分でも思います。今年は何が起こるか、とワクワクするスタッフさえいます。私もその一人ですが。
でも、本当に予想できないのは、天気でも地震でもありません。GTEの生徒たちです。
「英語にはかなり自信があります」とやってきた生徒が、初日に周りの生徒たちが英語をペラペラと流暢に話す発表を聞いて、いきなり出鼻をくじかれることがあります。ネイティブの壁に真正面からぶつかったのでしょう。
「自分はかなり変わっていてユニークなキャラクターと言われる方だ」と自負してやってきた生徒が、全国から集まった生徒たちと話してみたら、自分よりずっとワールドワイドな人たちがゴロゴロいたりして、「あれれ?自分って特別な存在ではなくて、案外何も特別なわけではない」と、今まで築いてきたアイデンティティを見失ったり、急に自信をなくしてしまった生徒もいました。
自分ではもっとできると思っていたのに、思うような成果が出せなくて、悔しくて泣く生徒もいます。一人ひとりの能力が高くても、チームとしては力が合わせられずに崩壊しそうになっている場面も見かけます。
もちろん、その逆もあります。
最初はほとんど発言していなかった生徒が、最終日のプレゼンでは堂々と英語で発表していたり、「英語はかなり苦手です」と言っていた生徒が、気がつけば英語でチームメンバーと議論していたりします。こちらが「この生徒はこういうタイプだろう」と思っても、その4日間でいきなり新しい人格が現れたり、何かが弾けてイキイキし出す生徒もいます。
そして、10年やってわかりました。GTEサマースクールでは、想定外のことが起こるのがデフォルトです。10年やらなくてもわかりそうですが、そこに何か方程式でもあるのかと考える時もありましたが、そのデフォルト状態こそがGTEの当たり前だったのです。だから最近は、何かが起きても「あ、今年はこれか」と思うようになりました。
予定通りに進めることより、そのとき目の前で起きていることにどう対応するか。生徒自身も、スタッフも、その場で考えるしかありません。考えてみれば、社会に出たって同じです。むしろ、人生全部がそうではありませんか?終わり方がわかっていることをやって、どんな意味があるのでしょう。
準備に準備して、自信を持ってGTEに来てみたら、自分よりできる人がたくさんいるかもしれない。自分の強みだと思っていたものが、たいした強みではないと気づくかもしれない。予定していたことが突然できなくなることもあります。
そこで、次に考えるべきはこれです。
「じゃあ、どうする?」
GTEサマースクールの4日間では、この問いが何度もやってきます。
台風が来ても、停電しても、自信をなくしても、泣いてもです。
最終日が、やってきます。
そして不思議なことに、毎年ちゃんと、前年とはまったく違う素晴らしいフィナーレを迎えます。「じゃあ、どうする?」と、問題に対して問いを立てて解決していった先に必ずフィナーレがあることを、私たちはこの10年間を通じて確信することができました。
だから「どの年が一番印象的でしたか」と聞かれても、やっぱり私は選べないのです。
全部の年が、想定外でしたから。だいたい何か起こるから、GTEに人は集まってくれます。そしてその人たちが、だいたい何か起こしてくれる。良くも悪くも何かが起きます。決まりきったことが目の前で起こることを誰が期待しているでしょう。立派な研究成果が出たとされることでも、偶然の産物だったりします。その常に何かが起こる環境がGTEで、私たちはそのGTEをこれからも何か素敵な出来事が起こる瞬間を作っていきたいと思います。
(書き手:能登)